Recommendation is communication. Part 2 〜 口コミは推薦の創発的現象 〜

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推薦が成立し辛い条件

DVDは「小さくて密なコミュニティ」で「比較的高価な商品」として扱われているため推薦が効果的に働きます。これを言い換えると「大きくて疎なコミュニティ」で「安価な商品」は推薦の効果が低いといえます。例えば「洗剤」といった日常用品は、値段が安く、その製品について熱く語る集団が日常内で形成される様子は想像し辛いものがあります。

SNSのコミュニティが推薦が成立する土台を作る

しかし、値段を変更することは出来ないかもしれませんが、「小さくて密なコミュニティ」を形成すること不可能ではありません。
「小さくて密なコミュニティ」を提供する空間として真っ先に頭の中に浮かぶのがSNS内のコミュニティです。SNS内では各自の趣向に基づいてコミュニティに加入するので、「 洗剤マニア 」といった日常では成り立ち辛い商品についても「密なコミュニティ」が存在しています。既に「小さくて密なコミュニティ」を形成しているため、こういったコミュニティ内で推薦を行えば、安価な日常用品に対しても購買行動につながるような推薦が行われるのではないでしょうか?

Recommendation is communication.

SNS内のコミュニティにおいては☆ココロ・カラダ・キレイ☆ トピック PR・イベント告知情報 コーナーといった宣伝活動を受け付けているコミュニティもあります。しかし、こういった活動はプロモーション・広告活動であり、推薦とは似て否なるものです。
ここで、もう一度「推薦とは何か」を考えると、推薦とは「システム(or 人)がユーザとメッセージのやり取りを行いコミュニケーションを行った結果、相手に何かを伝えること」と捉えられます。Amazonでは「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というシステムによる明示的な推薦を行っています。一方、SNS内で推薦に当たるのは「口コミ」です。口コミは、Amazonのように明示的なものでは無く、人々のコミュニケーションの中に存在する「暗示的」な推薦です。口コミが広がったと聞くことがありますが、口コミが広がったということは、ユーザ同士やシステム間で推薦を行った結果、創発して生まれてくる創発的現象として説明できます。
創発的現象であるため、自分の近くの現象のみを捉えていても実態は掴めません。まさしく複雑系の科学ですね。推薦といえばAmazonのようなシステムによる推薦をイメージしてしまいがちですが、現実には僕達のWeb上の活動の中にも、既に、推薦が目に見えない形で存在しているのでしょう。私達の間に交わされるコミュニケーションをこの論文ではメールという形で可視化したため全体像を捉えることが出来、口コミの広がりが理解出来できたのでしょう。
コミュニケーションという視点を通してもう一度Webを眺めると、システムによる明示的な推薦だけでなく、ユーザのやりとりの中に存在する暗示的な推薦の世界が見えてきそうです。

Futher more

口コミを分かりやすく説明してくれている書籍として「クチコミの技術」があります。

クチコミの技術 広告に頼らない共感型マーケティング

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「クチコミの技術」では主にBlogを用いたクチコミについて述べられており、口コミの起こすための7か条、口コミの評価方法と使用するWebサービスアフィリエイトGoogle Adsenseがクチコミに与える影響などというように口コミに対して様々な面から解説を行っています。口コミ成功の具体例として、涼宮ハルヒの憂鬱時をかける少女といった映像メディアから、ジレット フュージョン+1といった日常用品、日産自動車の各ブランドに関するBlogといった高価な商品まで取り上げています。「推薦」について興味を持った方、一読してみたらいかがでしょう?